オリンパスの35mm判一眼レフカメラとしては、1972年に登場したオリンパスMシステム一眼レフが有名です。オリンパスが社運をかけて開発したとも言われる本格的なシステム35mm判一眼レフカメラで、カメラの機能としては先行する一眼レフメーカーのカメラをよく研究しており、その上で独自の考えを盛り込んだ優れた機械制御式の一眼レフカメラでした。しかし実はオリンパスM-1はオリンパス最初の35mm判一眼レフではありません。M-1が登場する1年ほど前に輸出が開始されたオリンパスFTLが、オリンパス最初の35mm判一眼レフカメラでした。
オリンパスFTLはM42プラクチカマウントを備えた、布幕式横走りフォーカルプレーンシャッター式一眼レフカメラです。汎用性が高いM42マウントですが、オリンパスは独自の機能拡張を行っていて、専用レンズ使用時開放測光が可能になっています。また専用レンズはストップピンにより、常に定位置で固定されるようになっています。なお他社のM42プラクチカマウントレンズ使用時は、絞り込み測光が可能です。測光はCdSによる全面測光TTL式、EV3~18(ISO100)の範囲で、使用するバッテリーは当時一般的だった1.35VH-D型水銀電池で底部に格納します。
シャッター速度は1秒~1/1000秒とバルブ、タイム、フィルム巻き上げはレバー式で小刻み巻き上げ可能です。ファインダーはペンタプリズム固定式、倍率は0.92倍、ピントグラスは中央部マイクロプリズム式でした。
外観は当時の一眼レフとしてもオーソドックな大柄なデザインで、すぐに登場するM-1システムとは大きく異なっています。当時どうしてこの2つの異なるシステムの35mm判一眼レフカメラがオリンパス社内で開発されていたのか不思議に感じます。でも例えば露出計スイッチが巻き戻しクランクの下に位置し、ON、OFF、バッテリーチェックに切り替えるあたりのデザインや操作性は両方のカメラに共通で、やはり兄弟機なのだと感じられる部分もたしかにあります。
オリンパスFTLは、実は国内販売開始はM-1とまったく同時の1972年7月でした。Gズイコー50mmF1.4付きが50,000円、Fズイコー50mmF1.8付きが42,000円でした。M-1はF1.4付きが74,500円、50mmF1.8付きが46,500円と、FTLよりかなり高価でした。しかし華々しい宣伝のもとで売り出されたM-1に対して、FTLはほとんども宣伝されずその上すぐに生産が打ち切られてしまったため、国内ではかなり珍しいカメラです。
なおFTL用のオリンパス製M42マウントレンズは、標準レンズのほかGズイコー28mmF3.5、Gズイコー35mmF2.8、Eズイコー135mmF3.5、Eズイコー200mmF4が存在しました。
オリンパスFTLは機械制御式のカメラですので、M-1(OM-1)ともども弊社では修理可能な機種です。
作例写真 フィルムはフジ業務用フィルム(ISO100)