先月はローライフレックス3.5Fホワイトフェイス、クセノタール75mmF3.5レンズ付きをご紹介いたしました。クセノタールつながりで、今月はクセノタール60mmF2.8が装備されたベビーローライフレックス・スポーツをご紹介いたします。
弊社の会員には、我が国を代表するカメラ・レンズコレクターの方々がいらっしゃいます。修理のご依頼をお受けするカメラやレンズも、非常に珍しい、あるいは試作レベルのものが時々ございます。今回ご紹介するカメラも、たぶん世界に数台、ひょっとすると1台しか現存しないものであると推測されます。
カメラボディはベビーローライフレックスの戦前最終型、俗にスポーツと呼称されているモデルです。各部の特徴はオリジナルに良く適合しています。スポーツに装着されていたレンズは、戦前のカール・ツァイス社が製造したテッサー60mmF3.5レンズで、とてもよく写ります。ベスト判フィルムの入手が容易であれば、実戦機として作品製作に使用するには、たいへん優れたカメラであると言えます。
しかしこの個体に装着されているのは、ドイツのシュナイダー社が誇る傑作レンズ、クセノタールの名前が冠せられた60mmF2.8レンズです。実はクセノタール60mmF2.8というレンズが装着されて市販されたカメラは、ほかに存在がまったく知られていません。したがってこのベビーローライフレックスのレンズは、他のカメラから移植されたものではないと考えられます。つまりこれはシュナイダー社が6x6cm判ローライフレックス用に供給したクセノタール80mmF2.8/75mmF3.5と同様、ベビーローライフレックスシリーズ用にクセノタール60mmF2.8を開発し、試作としてこのカメラに組み込んだものでないかと推測されるのです。たいへん残念なことに、ベビーローライフレックスのシリーズには結局クセノタールレンズは装着されませんでした。
今回このベビーローライフレックス・スポーツカメラのオーバーホールのご依頼を受け、すべて処置した後で試写させていただきました。その結果をここに掲載させていただく次第です。絞り開放からたいへん優れた描写で、さすが天下の名レンズとして名高いクセノータルだと感心しました。早田によればこのカメラがオークションなどに登場すれば、驚くような価格がつけられることは間違いないそうです。世界的なお宝カメラと言えるでしょう。
弊社では1980年製造までのローライフレックス、ローライコード全機種の整備が可能です。どうぞ遠慮なくご相談ください。
フィルムはマコカラー200