今月の一枚

2009年3月 フジノン50mmF1.2 ライカマウント用

マウント側から。

ライカD2に装着したところ。

ニコンSマウント用レンズ(札幌今井コレクション)。

作例1  浅草土産 Fujinon50mm2.jpg 絞りF1.2開放 1/500

作例2 浅草寺五重塔 Fujinon50mm1.jpg 絞りF5.6 1/1000

作例3 飾り扇  Fujinon50mm3.jpg 絞りF1.2開放 1/250

 

解説

久々の中判蛇腹折り畳み式フィルムカメラ、GF670プロフェッショナルが3月中旬にいよいよ発売になるはずだったのですが、約1ヶ月延期になったというお知らせにがっかりされた方もいらっしゃるかと思います。このカメラに搭載されているレンズはEBCフジノン80mmF3.5で、4群6枚構成というぜいたくな仕様は、性能の高さを予感あるいは期待させるものでしょう。

さて、過去の歴史を振り返ってみると、フジの写真用レンズはその昔から性能の高さで知られていたといって良く、フジノンレンズの熱狂的なファンも少なくないようです。今回ご紹介するのは、そうしたフジノンレンズファンのみならず、大口径レンズファンのあこがれの一本と言える、ライカスクリューマウント(L39)用フジノン50mmF1.2です。現在でも十分大口径と言えるこのレンズは、日本の光学技術がドイツを目標として日進月歩を遂げていた1950年代に繰り広げられた35mm判カメラ用大口径レンズ開発競争の成果のひとつとして、1954年に登場しました。

その前年1953年には当時世界一の明るさを誇ったズノー50mmF1.1が登場、1955年にはヘキサノン60mmF1.2、1956年にはニッコール50mmF1.1とキヤノン50mmF1.2と続きます。キヤノン以外は今では珍品レンズとして非常に高価なコレクターズアイテムとなっています。このフジノン50mmF1.2レンズは、ライカマウント以外にニコンSマウント用などもありますが、珍品かつ高価であることには変わりはありません。なお手元の資料では昭和31年当時75,000円でした。ズノーは95,000円、ヘキサノンは78,000円、キャノンは60,000円、ニッコールは予価78,000とあります。

フジノン50mmF1.2は4群8枚構成で、そのうちの6枚のレンズに当時開発されたばかりの新種ガラスを採用して性能を高めたといいます。今回弊社で整備を終えたレンズで作例写真を撮影いたしましたが、絞り開放での中心部のシャープな写りに感心いたしました。また画面周辺部での像の崩れも少なく、ハイレベルな写りであるあることを確認できたと思います。もちろん少し絞ると周辺部まで文句のない高画質になります。

撮影に際してはピント面が浅いため、レンズとカメラの各部が正確に調整されていることが重要です。また距離計の視度もきちんと合わせておきましょう。不審な点があれば、弊社に整備をご依頼ください。