今月の一枚

2007年10月 セミレオタックスR型 トーコー75mmF3.5

横から。

折り畳んだところ。

背面。上カバー背面の2つの接眼部のうち、下側が単独距離計用、上側がファインダー用。

底部から。

作例1 浅草界隈1 1/100 F5.6 フジ・プロ160S

作例2 浅草界隈2 1/100 F3.5 フジ・プロ160S

作例3 浅草界隈3 1/100 F8 フジ・プロ160S

 

解説

セミレオタックスは、国産スプリングカメラとしてはかなり早い時期の、戦前昭和15年(1940年)に最初のモデルが昭和光学精機株式会社から発売されました。名前の接頭語であるセミは、日本では6×4.5cmフォーマットをセミ判と通称することからきています。同じ年に昭和光学はライカ型の35mm判フォーカルプレーンシャッター式カメラ、レオタックスも発売しているのでした。

セミレオタックスは、終戦後まもない昭和23年に再発売されましたが、昭和26年に全面的に改良されます。そして単独距離計を内蔵した上位モデルが登場するのです。単独距離計付きのモデルはR型、目測式のモデルはDL型と後になって名付けられています。今回ご紹介するのは、R型のほうです。

R型は写真でわかるように、ボディ上部に単独距離計を内蔵していて、ファインダー用の接眼部とは別の接眼部が設けられています。距離計は35mm判レンズ交換式レンジファインダーカメラとして有名なレオタックスと基本的に同じ構造の高精度なものとされ、実際精密なピント合わせが可能です。測距した値をレンズの距離指標に移し替えて撮影すれば、ピントがはずれることはないでしょう。なお次のモデルでは連動距離計式になるはずでしたが、残念ですがそのモデルはついに登場しませんでした。

セミレオタックスは搭載するシャッターユニットとレンズの組み合わせが何種類かあり、それによってもちろん価格も異なっていました。予算によってグレードを選ぶことができたのです。レンズは東京光学機械のトーコー(Toko)、日東光学のコミナー(Kominar)、そしてメーカーは不明ですがレジノンが知られていて、いずれも3群3枚のトリプレット型で、75mmF3.5というスペックでした。今回のカメラは最上位のトーコー付きですが、作例をみておわかりいただけるように周辺部はやや甘い感じですが中心部は絞り開放からシャープで、十分写真を楽しむことができます。

小柄な日本人の体型に適したセミ判のカメラは、日本では人気が高いのですが、国産のセミ判カメラとして小西六のセミパール(後にパール)、千代田光学のセミミノルタと並んでよく写るカメラのひとつといえるでしょう。

なお弊社での整備費用は、DL型は18,000円、R型は30,000円です(いずれも税別)。蛇腹の交換等も可能ですが、別途費用をお見積もりいたします。どうぞ遠慮なくご相談ください。

(撮影は整備を担当した山本弘仁)