第二次世界大戦前ニーダーゼーリッツにあったカメラ・ベルクシュテーテン(KW)が開発したエキザクタに続くドイツ2番目の一眼レフは、プラクチフレックス(Praktiflex,1939)と命名されました。戦後ソ連占領軍の要求によってより性能と汎用性の高い一眼レフを製造することとなり、新型一眼レフのプラクチカ(Praktica)が登場したのは1949年のことです。レンズマウントは口径42mmピッチ1mmのプラクチカマウントで、今ではM42マウントと呼ばれることが多くなりました。M42マウントはその後世界中の様々なカメラ・レンズメーカーに採用された汎用性の高いマウントです。
1952年以降プラクチカは次々に改良を受けながら、大きく発展し大量に生産されるようになりました。最初がプラクチカFXで1952~55年で約10万台、次がプラクチカFX2/3で1955~59年の間に約14万台、その後のプラクチカⅣおよびVシリーズは1959年から66年まで約18万台、プラクチカ・ノバシリーズは1964~69年に約26万台、プラクチカPLシリーズは1967~76年の間に約84万台、1970年以降プラクチカLシリーズは1989年までにモデル数約40で総計の生産台数はなんと555万台に達しています。
また、新しいプラクチカバヨネットマウントを装備した新型電子制御式一眼レフ、プラクチカBシリーズおよびBXシリーズは、1979年に登場してから1990年までに約70万台製造されたそうです。
今回ご紹介するカメラは1952年に登場したプラクチカFX3です。実はこのカメラはプラクチカFX2と同じものだそうです。プラクチカFXのFXは、フラッシュ用のシンクロ接点として最新のF接点とX接点を備えていることからの命名です。FX2とFX3は元祖プラクチカマウントのカメラとして、世界で最初のレンズの絞りを制御する連動機構を備えています。この機構は日本のペンタックスを始めとして、他社も真似することとなりました。
プラクチカはウエストレベルファインダーを標準として備えていましたが、35mm判一眼レフカメラにペンタプリズムを搭載することがコンタックスSやレクタフレックスなどの登場により一般化してきたため、後付のペンタプリズムを装着できるようになりました。初代プラクチカFXは、ウエストレベルのフードの上に大きく突出するプリズムユニットでしたが、このFX2/FX3ではウエストレベルファインダーのフード部に一体化するように設計されていて、使用上の違和感もあまりありません。しかし1959年に登場したプラクチカⅣからは、ペンタブリズム固定式になっています。
プラクチカFXはシャッター速度が高低2段切替式となっていて、シャッターダイアル中央に切り替えノブがあります。赤にセットするとダイアルの赤字の低速シャッターが動作します。黒にセットすると黒字の高速シャッターとなります。シャッター速度系列はまだ旧式の大陸式です。
今回撮影に使用したビオター58mmF2レンズは、長らく東独製の一眼レフカメラの標準レンズとして大活躍したレンズです。初期は黒鏡胴でコンパクトなレンズでしたが、半自動絞り機構が内蔵されてからはこのように大柄なレンズになりました。開放からよく写るレンズで、少し絞ると作例写真でおわかりいただけるように非常にシャープな描写となる名レンズです。
弊社ではプラクチカFXのカメラやレンズの分解整備が可能です。どうぞご相談ください。
★作例写真 フィルムはフジ業務用フィルムISO100