このところライカのレンズを続けてご紹介していますが、今月もスーパーアンギュロン21mmF3.4レンズを取り上げることにいたしました。写真のレンズは弊社でオーバーホールしたばかり、この原稿を書いている時点では委託品として店頭に並んでいます。とても華麗なレンズなので、撮影してみたくなりました(笑)。
エルンスト・ライツ社の最初の21mm超広角レンズは、1958年に発売されたスーパーアンギュロン21mmF4レンズです。その名前でわかるように、このレンズは戦前のクセノン50mmF1.5レンズ同様、ドイツの超有名レンズメーカーであるシュナイダー社の協力を得たレンズです。当時ライツ社には超広角レンズや大口径レンズを独自に開発する力はなかったということです。
スーパーアンギュロン21mmF4のレンズ構成は4群9枚の対称型ですが、この対称型のレンズ構成を持つスーパーアンギュロンは大判用レンズなどで健在で(なお一眼レフ用としてレトロフォーカスタイプの「スーパーアンギュロン」があるので、名前だけでは区別できません)、その歪みのないシャープな描写は世界的に高い評価を受け続けています。このレンズは1963年まで約5,300本製造されていて、別にLマウント仕様も約1,500本製造されているそうです。フィルターサイズはE39、フードはラッパ型をした金属製のIWKOO/12502が使用できます。フードにもスーパーアンギュロンと刻印されています。
1963年には明るさが約半絞り向上した、新型のスーパーアンギュロン21mmF3.4(4群8枚構成)が発売されました。1968年頃までは外観がクローム仕上げですが、その後はブラック仕上げに変わっています。フィルターサイズはE48あるいはシリーズⅦです。フードは12501でプラスチック製の複合形状となり、エルマリート28mmF2.8レンズと兼用になりました。製造番号2473251までのレンズはライカM5では使用できませんが、その後のレンズは装着時M5の測光アームがあがらないようになっているため使用可能です。なおライカ独自の21mm超広角レンズの登場は、1980年のエルマリート21mmF2.8まで待たなければなりませんでした。
さてスーパーアンギュロンは、その独特の描写に人気があります。作例写真でもわかるように、四隅に向かってなだらかに光量が落ちていくのですが、それと歪みのない空間描写がとてもよい雰囲気感を醸し出してくれます。解像度は高いのですが、コントラストが必要以上に強くなく、落ち着いた描写です。モノクロフィルムで撮影したときに、その良さが特に発揮されるように思います。
最近はライカの広角レンズはのきなみ品不足となっていて、このレンズも状態の良いものが見つけにくくなっています。レンズに傷があったり、曇っていたりするものが少なくありません。良い状態のものを入手したいものです。もちろん弊社ではオーバーホールをお受けいたしております。