先月はアメリカ国民に大いなる希望をあたえたと言われている、デトローラ400を取り上げました。引き続いて今回は、アメリカ最初の35mm判フォーカルプーレーンシャッターカメラ、パーフェックスの流れをくむパーフェックス22を取り上げることにしました。
パーフェックスシリーズを製造したアメリカ・カメラ会社(Camera Corp. of America)は、イリノイ州のシカゴに1938年頃設立され、当初の社名はアメリカ・スナップ用カメラ会社(Candid Camera Corp. of America)でした。1938年に製造した最初のパーフェックス・スピード・キャンディッド(Perfex Speed candid)は、35mmフィルムを使用するベークライト製ボディのカメラで、1/25~1/500秒の範囲で設定可能な布幕式フォーカルフーレーンシャッターを内蔵していました。アメリカでのこの形式のカメラの最初のものでした。ボディ上部には単独距離計を備えていました。またボディ下部には光学式露出計もついていました。レンズは取り外し可能で、グラフ・パーフェックス・アナスチグマート(Graf Perfex Anastigmat)50mmF2.8かF3.5レンズが装着されていました。
翌1939年にはアルミ金属製のボディとし、シャッター速度の範囲を1~1/1250秒と性能を大幅に向上させた、パーフェックス44 (Perfex Forty-Four)を登場させました。外観も近代的なイメージのカメラに変貌しました。続いてシャッター速度レンジを1/25~1/500とスペックダウンしたパーフェックス33 (Perfex Thirty-Three)と、反対に光学式露出計を内蔵した上級機パーフェックス55 (Perfex Fify-Five)を1940年に発売しました。パーフェックス55には、アメリカの有名レンズメーカーであるウォーレンサック(Wollensak)社の、ヴェロスチグマート(Velostigmat)50mmF2.8/F3.5レンズが装着されたモデルがあります。
今回ご紹介するパーフェックス22は、第二次世界大戦中の1942年に登場したパーフェックス55とほぼ同じ性能をもつカメラで、F2.8付きもあったパーフェックス55に対してレンズはサイナー(Sceinar)50mmF3.5レンズとなっています。米国には戦争中でもこのような民生用カメラを製造販売する余裕があったということですね。
ボディはアメリカのカメラらしく、良く言えば合理的な、無骨なデザインとも言えるものですが、その取り扱いは容易です。裏蓋が完全にはずれるため、ライカのようなフィルム装てんの困難はありませんし、各部の操作もバルナックタイプのライカを使ったことがある方なら、特に難しい説明はいらないと思います。基線長の長い距離計は十分な精度がありますし、シャッター速度のレンジも不足はありません。なお交換レンズは標準レンズのほかはなかったようです。
戦後はボディをアルミダイカストから金属プレスに替えたパーフェックス・デラックス(Perfex Deluxe)を1947年に発売、続いてフォーカルプレーン式シャッターをやめてレンズシャッター(Alphax Leaf Shutter)を搭載したパーフェックス・ワン・オー・ワン(Perfex 101)を発売しました。このパーフェックス101にはウェーレンサック社の50mmF4.5レンズが装着されましたが、このモデルにはドイツのコンパーシャッターを採用しエクター50mmF3.5やクセノン50mmF2といった有名レンズが装着されたモデルも知られています。それらはメーカーが製造したものではなくて、販売店でより上位のパーツに交換したのではないかとも言われています。
アメリカ・カメラ会社は1949年に、同じアメリカのシロ・カメラ(Ciro Camera Inc.)に吸収されました。なおCamera Corp. of Americaという名前を持つカメラメーカーは、ほかにも存在していますので混同しないように注意が必要です。
パーフェックス・シリーズはきちんと整備された状態であれば、作例写真のとおり充分実用に使うことができます。このカメラの修理・整備については、どうぞ弊社に相談ください。