今月の一枚

2012年5月 エキザクタ 80mmF2.8

キエフ60にとりつけ、専用フードを装着。

レンズの元箱。

クセノタール80mmF2.8レンズ(右)と比較。エキザクタ80mmF2.8レンズの前玉はかなり奥目で径が小さい。

後群レンズの径はどちらも同じくらい。エキザクタ80mmF2.8レンズ(左)の後玉は曲率がかなり大きい。

作例1 1/250 F11

作例2 1/250 F11

作例3 1/250 F11

作例4 1/250 F11

作例5 1/250 F11

 

解説

今月も先月に続いてペンタコンシックス関連の話題です。今から15年前の第一回東急世界の中古カメラフェアで配布した早川通信1997年5月には、ペンタコンシックス・ファミリーの後編を掲載しました。そこではペンタコンシックスの兄弟機であるエキザクタ66とその交換レンズについて、少し触れました。当時は実物を見たことがなく、カタログなどからの情報を整理した内容でしたが、その後シュナイダー社がエキザクタ66用に製造したペンタコンシックスマウントのレンズのうち、クルタゴン60mmF3.5、テレクセナー150mmF4を入手することができ、その卓越した描写性能に感激したものです。またハヤタ・カメララボを始めてからは、エキザクタ66やクセノタール80mmF2.8レンズの修理依頼が何件かあり、そちらも実機に触れることができました。

そのうちにEbayに外観はシュナイダー社製レンズにそっくりなのに、レンズ銘がビオメタール80mmF2.8となっているレンズや、エキザクタ80mmF2.8というまったく聞いたことがないレンズが売りに出されていることを知り、落札して入手してみたのです。実物を見てみると、外観はシュナイダー社製レンズそのものです。どのような経緯でこのようなレンズが作られたのか、いろいろ調べてみましたが、今もって正確なところがわかりません。今回はレンズ構成も不明なままの、エクザクタ80mmF2.8の作例をご紹介することにしました。

エキザクタ80mmF2.8の元箱には、ドイツ統合後にシュナイダー社の子会社として活動したというペンタコン社(Pentacon G.m.b.H.)のシールが貼ってあります。製造したのはたぶんペンタコン社でしょうから、外装がクセノタールやクルタゴンなどと同じである理由はわかりました。80mmF2.8というスペックは、6x6cm判中判カメラの標準レンズとしては普通のものです。しかしこのエギサクタ80mmF2.8レンズは、ハッセルブラッドやローライフレックスのプラナー80mmF2.8、あるいはエキザクタ66用のクセノータル80mmF2.8、ビオメタール80mmF2.8といった高性能で有名なレンズ群に比べて、前玉が小さく、そして鏡胴の奥深くに沈み込んでいます。この形状をみると、どうもテッサータイプのようです。ただしテッサータイプのレンズにしては、後玉の曲率がかなり大きいのが気になります。ひょっとするとトリブレットの可能性もあるかもしれませんが、現時点ではなんとも言えません。テッサータイプだとすれば、レンズの正しい名称としてはクセナーではないかという意見が、レンズに詳しい識者からは出されています。

いずれにしても謎が多いレンズですが、鏡胴はクセノタールやビオメタールとほとんど同一なので、 専用の角型プラスチックフードを使用することができます。

今回の作例は、ボディとして信頼性の高い先月ご紹介したキエフ60に装着して、撮影したものです。撮影結果を見て驚いたのは、その発色の素晴らしさで、桜が本当に美しい桜色をしています。先月のボルナ80mmF2.8レンズの作例と比較すると一目瞭然で、ボルナはとてもシャープですからこれだけを見ているとロシア製レンズもなかなかたいしたものだと思えるのですが、エキザクタ80mmF2.8レンズの華やかな桜を見てしまうとその雰囲気の違いにドイツ製レンズの実力を改めて見直すといった感じでしょうか。

エキザクタ80mmF2.8レンズは、弊社の委託にも先日まで出ていましたが、ほとんど知られていないためか、注目を集めませんでした。しかしレンズとしては珍しいもので、数が少なく、今では入手する機会がなかなかありません。ご興味がある方は、数少ないチャンスを捕まえてみてください。なおレンズのメンテナンスは、弊社で行うことができます。どうぞ遠慮なくご相談ください。

 ★撮影フィルムはすべてフジ160Sプロ