今月の一枚

2014年6月 ニコンF フィッシュアイ・ニッコール8mmF8

201406_camera1L

レンズ前部後端がカメラにごく近く、ニコマートやニコンF3以降のカメラなどには装着できない。

レンズ前部後端がカメラにごく近く、ニコマートやニコンF3以降のカメラなどには装着できない。

後群レンズはボディ内に突出しているので、ボディのミラーアップが必要。

後群レンズはボディ内に突出しているので、ボディのミラーアップが必要。

内蔵フィルター。

内蔵フィルター。

前群レンズの分解。

前群レンズの分解。

作例1 善養寺山門 F11 1/30

作例1 善養寺山門 F11 1/30

作例2 善養寺影向の松 F11 1/30

作例2 善養寺影向の松 F11 1/30

作例3 浅草寺本堂 F11 1/30

作例3 浅草寺本堂 F11 1/30

作例4 はとバスA  F8 1/30

作例4 はとバスA  F8 1/30

作例5 はとバスB F8 1/30

作例5 はとバスB F8 1/30

作例6 右折車 F11 1/60

作例6 右折車 F11 1/60

6月はうっとうしい梅雨の季節です。カメラやレンズにとっても良くない時期で、特にレンズやファインダーなどにカビが発生する危険性が高まります。カビを防ぐだめに一番良いのは、カメラやレンズを使うことです。頻繁に使用している機材にカビが発生することは、まずありません。カビは多湿で暗く、そして振動のない場所を好みます。カメラやレンズを使うということは、カビが嫌う環境になっているということになります。

しかし使用しない機材については、保管に注意しないと、わずか1ヶ月くらいでもカビが発生することがあります。保管する前によく機材を乾かし、汚れを除去し、密閉できる容器やビニール袋に入れ、乾燥剤やかび防止剤と一緒に保管するようにしましょう。それでも何年もしまい込んでしまうと、カビが発生することがありますので、時々虫干しを兼ねて機材の点検をするようにしてください。

万が一カビの発生が認められたら、大至急取り除くことが必要です。発生し始めた時であれば、カビを綺麗に取り除くことができ、コーティングやガラスに腐食の跡を残すことはありません。しかしカビが進展すると、最初にコーティングが腐食され、次はガラスが腐食され、カビを取り除いてもカビ跡がはっきりと残ってしまいます。性能に影響がない軽微なカビ跡が認められるレンズでも、中古市場での価値は大幅に低下してします。くれぐれも注意したいものです。

さて今回とりあげたフィッシュアイ・ニッコール8mmF8レンズですが、お客様が大切に保管されていたのですが、前玉の内側にカビが発生したため、修理のご依頼を承ったものです。幸いきれいにカビは取り除くことができ、作例でわかるように、シャープな写真を撮ることができました。

フィッシュアイ・ニッコール8mmF8レンズは、ニコンF用ニッコールレンズで最初の魚眼レンズです。1962年(昭和37年)7月に発売されました。魚眼レンズ特有のキノコ状の形態をしたレンズで、大きな前玉が印象的です。ピントは固定焦点、絞りはf22まであります。このレンズはバックフォーカスの関係で、カメラをミラーアップしなければ装着することができません。このため外付けのファインダーが供給されていますが、このファインダーは160度の視野までしかカバーしていないので、正確な撮影範囲の確認はできません。このレンズで撮影されたイメージは、フィルムサイズぎりぎりの24mm円形でした。これではスライドにマウントした際などに端が切れる不都合があったためか、以後のニッコールの全周魚眼レンズは少し小さいイメージサークルに結像するようになっています。今回の撮影でも、上下の端が少し切れてしまうコマがありました。

このレンズには外付けフィルターの装着が不可能なため、6種類のフィルターを内蔵しています。ここのフィルターが曇りやすいので、時々清掃が必要です。金属製のねじ込み式前キャップと、専用のリアキャップが付属、外付けファインダーと一緒に収納することができるケースも供給されていました。製造本数は製造番号が連続していると仮定しても1,300本ほどで、今では非常に珍しいレンズといえ、中古カメラ店の店頭ではかなり高価です。発売当時の価格は、ファインダー付きで69,000円でした。

今回貴重なレンズをカビから救うことができ、たいへん嬉しく思っています。