今月の一枚

2005年10月 エキザクタ66 テッサー80mmF2.8

右横からみたところ。大きな蝶ネジの頭が巻き上げレバー。

マウント部と上下に分かれた反射ミラー。

フィルムマガジンを取り外したところ。

作例1 絞りF11 1/250  フジ RDPIII

 

解説

35mm判金属製一眼レフの歴史は、1936年ドイツのイハゲー社のキネ・エキザクタ(Kine Exakta)に始まることは、あまりに有名です。イハゲー社はオランダ人のヨハン・シュティーンベルゲン(1886-1967)が1912年に設立しました。ヨハンはドレスデンのオランダ名誉領事にまで出世しましたが、第二次世界大戦中に亡命してしまいます。しかしイハゲー社はオランダ資本と言うことで、第二次世界大戦後東ドイツにあったにもかかわらずソ連軍に接収されず、また1970年にVEBペンタコンに吸収されるまで東ドイツ国営カメラ企業群とは異なる立場にありました。

イハゲー社は35mm判のエキザクタ以外にも様々なカメラを製造しましたが、そのなかで戦前と戦後にそれぞれ一機種ずつ6x6cm判の全金属製一眼レフを製造しています。それがエキザクタ66です。戦前型と戦後型は大きく形が異なっていて、レンズマウントも異なります。今回撮影に使用したカメラは戦後型モデルで1953年に登場、直方体の形をした高性能カメラです。開発は戦後型も戦前型もヴィリー・トイブナーの指揮の下に行われましたが、キネ・エキザクタを始め革新的カメラを開発したカール・ニュヒターラインはフィルム送りがうまくいかないだろうと予言して参画せず、結果的にどちらもフィルム送りの問題から大量生産できないまま生産終了してしまいました。このためいずれのカメラも稀少品で、滅多にみかけることはありません。

さて、戦後型のエキザクタ66のスペックを見ていきましょう。フィルム交換はマガジン式、ただし引き蓋がないので撮影途中での交換はできません。シャッター速度は1/1000秒から12秒までの長時間露出が可能で、セルフタイマーもシンクロ同調機構も内蔵しています。ファインダーは大きく、大型のコンデンサーレンズのおかげで視野の隅まで鮮明です。ユニークなのはミラーで、上下二分割されていて、シャッターを切ると上側は上にあがってファインダーからの光を遮光し、下側は下に格納されます。しかしファインダーではこの分割されたラインはまったく見えないので、撮影には影響ありません。この方式は、国産のゼンザブロニカECがそっくり真似ています。

フィルム装填が少し面倒ですが、撮影操作自体は簡単で、なにより素晴らしいのはテッサー80mmF2.8レンズの撮影結果でしょう。作例のようにF8くらいまで絞ると、画面全体に高解像で非常に鮮明、そのうえ発色も自然でとても美しい描写です。なお撮影してみるとやはりフィルム送りが安定せず、コマ重なりが生じることがありますが、手元のカメラは許容できる範囲です。交換レンズとしては広角レンズはありませんが、マクロキラー90mmF2.8やテレキラー300mmF5.6などいくつかあり、私の手元にもプリモタール180mmF3.5があります。

戦後型エキザクタ66の製造台数は約2,250台です。なおその後ペンタコンシックスというカメラの改良版も西ドイツでエキザクタ66と名付けられて販売されたので、混同しないように注意が必要です。

エキザクタ66とその交換レンズの修理は弊社に遠慮なくご相談ください。