マキナといえば、戦前から戦後にかけてドイツのプラウベル社が製造したプレスカメラとして有名です。このプラウベル社を資本傘下においた日本のドイ・インターナショナル・グループが、設計をプラウベル社に行わせ、製造を国内メーカーに委託して1979年(昭和54年)に発売した6×7判レンジファインダーカメラがマキナ67でした。
ボディとレンズおよびシャッターがまとまった前板部の間を蛇腹とたすきでむすび、収納時には扁平にコンパクトにまとまるというスタイルは、戦前からの名機マキナのデザイン上の血統を受け継ぐものといえるでしょう。
このマキナ67シリーズは、現在も名機の呼び声高く中古市場でも人気が非常に高いのですが、その最大の魅力はやはりニッコール・レンズでしょう。 マキナ67の標準レンズ、ニッコール80mmf2.8は4群6枚構成で、画角59度というのはライカ判に換算すると40mmに相当する準広角です。 このマキナ67は、独特のシャッターボタンと同軸にある距離ダイヤルの操作に慣れればとても扱いやすいカメラで、撮影結果は実にすばらしいの一言につきます。ニッコール80mmf2.8は開放から十分シャープで、少し絞るとさらに画質は向上します。発色も鮮やかでです。このすばらしい描写と携帯に便利な折り畳み式ボディというコンセプトのマキナ67に対するニーズは今も高く、それが中古市場での高価格に現れているといるでしょう。
さて今月の一枚は、1981年(昭和56年)10月に登場した広角専用機マキナW67です。レンズはライカ判換算28mm相当の広角の、その名もワイドニッコール55mmf4.5で4群6枚対称型。このニッコールの描写も素晴らしいもので、開放では周辺光量がやや不足するものの、F5.6から小絞りでは画面全体にきわめて高画質となります。歪曲がないその描写は建物など、実にすっきりと写ります。 レンズが広角になったため、GPD素子使用の内蔵露出計の測光角は20度と、マキナ67の倍の広がりをもっています。蛇腹の伸縮はマキナ67より当然短くなっていますが、そのため使用時でもコンパクトです。ボディ前面にホールディングをよくするための溝が横縞状に切られていて、デザイン上のアクセントにもなっています。サイズは折り畳んだ状態で162mmx115mmx54mm、重量は1,200g。このカメラはたったの3,500台しか製造されず、このため世界的に品薄で中古市場では相当高価ですが、中判カメラの中でも圧倒的に魅力的なカメラです。
現在マキナ67/670やW67の修理については、カメラの状態によって修理の可否を判断させていただいております。交換部品は入手できませんので、部品交換が必要な修理は原則としてお受けできません(遮光モルトの交換と、蛇腹の新品交換は可能)。巻き上げができないカメラやシャッターが切れないカメラも、修理不能でご返却となる場合があります。オーバーホールで処置できた場合の修理料金は60,000円(税別)です。まずは遠慮なくご相談ください。