二眼レフの王者と言えば、ドイツのフランケ&ハイデッケ社のローライフレックスとローライコードのシリーズであることに異論を唱える人はまずいないでしょう。金属製二眼レフの基本形を確立したモデルが初代ローライフレックス・オリジナル(1928年)で、その後その機能や性能、そして品質は常に二眼レフの頂点に位置し続けたのです。 ローライフレックスは高級機、ローライコードは普及機という位置づけでしたが、どちらもカメラの操作性が抜群に優れていたため、特にローライコードは各国で類似のモデルが多く登場し、日本ではその操作性がほとんど同じというモデルも少なくありません。ですから、ローライコードをよく知っておくと、様々な二眼レフの操作にとまどうことが少なくなります。もちろんローライコード自体も進化していったのでモデルごとに操作は異なるのですが、いろいろな二眼レフカメラに触れれば触れるほど、ローライがその時代の二眼レフの目標となったカメラであったことがよくわかってきます。
さて今回は戦前の1938年に登場したローライコードIa型です。専門書によると細かな分類があり、これはType3というモデルだそうですが、撮影に使用する上ではIa型とⅡ型系はほとんど違いがありません。このモデルのレンズはカール・ツァイスのトリオター75mmF4.5です。 トリオターは3群3枚のトリプレットタイプのレンズですが、カール・ツァイスのトリプレットレンズの中ではもっとも高級なタイプで、実写性能もなかなかのものです。作例は絞りF4.5開放ですが、ピント面は見事にシャープ、背景のぼけ方はとても良い雰囲気が出ていると思うのですが、いかがでしょうか。まだこの時代のレンズにはコーティングがありませんが、逆光でなければ実用上十分な性能があります。これより後のモデルではトリオターは75mmF3.5と一段明るくなり、そしてその後シュナイダーのクセナー(Xenar)75mmF3.5に代わりさらに性能が向上します。
このモデルはセミオートマット機構が備わっているので、底部の赤窓にフィルム裏紙の1を出し、次に巻き上げノブ中心部を押しながらカウンターリセットボタンを下に下げると、カウンターが1になります。漏光防止のために赤窓の蓋を必ず閉じ、後は1コマ撮影するごとに巻き上げノブ中心部を押して巻き上げると1コマ巻き上げることができます。シャッターとの連動機構はありませんから、注意しないと二重写しや空写しをしてしまいます。
二眼レフカメラの良い点は、一眼レフカメラのようにミラーの上下がないため、低速シッャターでも手ぶれしにくいことです。この写真も、F4.5開放1/25秒手持ちでまったく手ぶれしていません。もちろん構え方やスクリーン像が左右逆の点など、二眼レフ撮影には慣れと経験が必要ですが、撮影がとても楽しいので、ぜひ多くの方に二眼レフで良い写真を撮影していただきたいと思います。特にローライコードのシリーズはローライフレックスに較べてはるかに軽量で携帯に便利、そして価格も安価で入手しやすく、なにより確実に写るので初心者の方にも安心してお勧めできるカメラです。
ローライコードおよびそれに準じた二眼レフのオーバーホール料金は、30,000円(税別)です。反射ミラーが痛んでいる場合のミラー交換部品代(7,000円)などは別途となります。
なお、最後に写真のチワワは、新しく早田カメラ店(有限会社フォトバザール・ジャパン TEL03-3841-5824)のマスコット犬になったピコ(♂)です。早田清より、ラブラドール・レトリバーのクリスティーナ(♀)ともども、よろしくお願いいたしますとのことです。