ハッセルブラッドと言えば、6x6cm判全金属製一眼レフカメラとして世界的な名声を博し、プロ用カメラの代表機としてカメラ好きで知らない人はいないでしょう。実際に今現場で使われているかどうかはともかくとして、テレビドラマなどにもスタジオで使われているカメラとして昔からよく登場しましたから、カメラにあまり詳しくない人でも視覚的になじみがあるはずです。また私より少し上の年齢層のカメラ好きの方には、ハッセルブラッドに対してとても強いあこがれを抱いていた方が少なくないようで、それはハッセルブラッドのプロ用カメラとしての実績ともに、今はともかく絶頂期の頃はとても高価で、なかなかアマチュアには手がだせなかったという時代背景があったためのようです。
ハッセルブラッドの最初のカメラ、ハッセルブラッド1600Fを開発したのは、スウェーデンのビクター・ハッセルブラッド株式会社(Victor Hasselblad Aktiebolag)を1941年に設立したピクター・ハッセルブラッドですが、ハッセルブラッド一族はそれより100年も前の1841年にフリッツ・ビクター・ハッセルブラッド(Fritz Victor Hasselblad)がF.W.ハッセルブラッド社を設立していて、その発展の過程でカメラなどの写真機材を扱うようになっていました。ビクター・ハッセルブラッド株式会社は、戦前はスウェーデン王国空軍のための軍用カメラの製造を手がけていましたが、戦後1948年に初めての民生用カメラである1600Fを発表しました。
この形式のカメラのルーツとしては、戦前にドイツのクルト・ベンツィン(Curt Bentzin)社が開発したプリマフレックス(Primarflex, 1935)という6x6cm判のボックス型の全金属製一眼レフが有名です。四角いボディにフォーカルプレーン式シャッターを組み込み、レンズ交換式としたカメラです。ハッセルブラッド1600Fはこのカメラを発展させ、一軸式のシャッター速度ダイアルと巻き上げノブを兼用させるという巧みな構造によって、操作性を著しくシンプルとし、外観デザインを非常に洗練した美しいカメラとしたのでした。また6x6cm判一眼レフカメラとして、世界で初めてマガジン交換式となりました。
ただし1600Fは最高速1/1600秒を誇ったシャッターにトラブルが続き、1952年最高速度を1/1000秒に抑えることで、シャッターの安定性と信頼性を向上させた改良型の1000Fが登場したのです。今回ご紹介するカメラがその1000Fで、撮影レンズは米国コダック社製のエクター80mmF2.8レンズです。
コダックのエクターレンズは非常に優れた描写をするレンズが多いことで有名で、この今月の一枚でも過去コダック・エクトラカメラ、コダック・レチナ2型カメラでエクターレンズをご紹介してきましたから、これが3回目です。このエクター80mmF2.8レンズは、ガイガーカウンターをあてるとすぐにわかるのですが、レンズに放射能物質を混ぜ込んだいわゆるアトムレンズで、高性能化をはかったものでしょう。その描写は1000F/1600F用にカール・ツァイス社が供給したテッサー80mmF2.8とはやはり異なるようで、より階調が豊かに表現されるように思います。
豆知識?ですが、ハッセルブラッドの製造番号は頭に2つのアルファベットがついています。’VH PICTURES’ の順に1234567890だそうです。CPだと1953年ということになるわけです。
さてハッセルブラッド1000Fの整備ですが、昨年から今年にかけてご依頼が急増しています。オーバーホール料金は、標準レンズおよびマガジンの整備込みで基本料金160,000円(税別、以下同)です。このほかに弊社会員登録費用が必要です。また、今回のように部品交換が必要な場合、部品代が追加となるため、別途お見積もりいたします。なおハッセルブラッド1600Fは、さらに修理が困難のため基本料金200,000円となります。いずれのカメラも現状では弊社社長早田しか処置できませんので、納期は3ヶ月前後必要です。また中古カメラ市などイベントや海外出張の関係で、すぐには修理をお受けできない場合もございますので、あらかじめご了承ください。
なお通常のハッセルブラッド500Cや500C/Mなどのオーバーホール料金は、標準レンズおよびマガジン込みで一式60,000円で、納期は通常のカメラ修理に準じています。どうぞ遠慮なくお問い合わせください。