6月に携帯しやすい折り畳み可能な大型木製一眼レフカメラとして、メントール・フォールディング・レフレックスをご紹介いたしましたが、今月は小型で携帯しやすく性能抜群の木製一眼レフカメラ、ミロフレックスをご紹介いたしましょう。
ミロフレックスは折りたたんでコンパクト化することが可能な、木製の一眼レフカメラです。縦に走行する布幕フォーカルプレーンシャッターを内蔵していて、80年以上前のカメラなのに最高速度は1/2,000秒という高性能ぶりです。一眼レフカメラですから、ピントと構図をファインダースクリーンで正確に決定することが可能ですが、おもしろいことにミラーを格納した状態でも撮影可能なように背面にレンズからの像を直接観察できるピントグラスも備わっており、構図を決めるためのフレームファインダーも備わっています。この形態にすれば当時の一般的なプレスカメラと変わらないものになります。
ミロフレックスのアイデアはオランダ人の発明家によるもので、第一次世界大戦前にドイツのネッテル(Nettel)社が製造の権利を買い取ったということですが、製造はされませんでした。1919年にコンテッサ(Contessa)社とネッテル社が合併した後、1925年頃にミロフレックスの発売が開始され、1926年にコンテッサ・ネッテル社がイカ(ICA)社・エルネマン(Ernemann)社・ゲルツ(Goerz)社との4社合同によってツァイス・イコン(Zeiss Ikon)社となった後も1936年頃まで生産が続けられました。ツァイス・イコン社の時代のほうが製造期間が長いので、現在目にするミロフレックスの多くはツァイス・イコン社のロゴが入っています。
ミロフレックスは9x12cm判の撮影が可能な大型のBタイプと、6x9cm判用の小型のAタイプがあります。ツァイス・イコン社のカメラ番号ではAタイプは859/3、Bタイプは859/7です。今回撮影に使用したカメラはAタイプのほうです。コンパクトなボディで取り扱いが容易な上に、一眼レフですので撮影時の構図やピントが確実に決まるため、撮影結果の歩留まりが大変良いという特徴があります。つまり確実に撮影できるということです。ラーダのロールフィルムフォルダーは、中枠を入れ替えることで6x6cm判や6×4.5cm判の撮影も可能ですから、気分によって四角い構図にすることもできます。
Aタイプに備わっているレンズはテッサー120mmF4.5が多いようですが、ほかにテッサー135mmF4.5や大口径のビオ・テッサー135mmF2.8、テッサー145mmF2.7も知られています。Bタイプはテッサー150mmF4.5が標準的ですが、ほかにテッサー150mmF3.5、150mmF2.7、ビオ・テッサー165mmF2.8があるそうです。このミロフレックスは当時は非常に高価な高級カメラであったそうです。
手にしてみると見かけよりも重いカメラですが、手持ち撮影は無理なく行え、機動性が大変優れています。6x9cm~4×5インチ判の大サイズの写真をとても素早く撮影できる木製大型一眼レフカメラは、デジタル時代の今でもきわめて魅力的な写真撮影機材です。
さて、実際にこのタイプのカメラを使用しようとしたときに問題となるのは、カメラの整備状態です。弊社ではカメラ本体やレンズの修理やオーバーホールが可能で、写真のカメラは劣化したシャッター幕を交換し、シャッター機構部の分解整備、レンズの分解清掃、さらに外装革の修復も行っております。ご希望であればさらに外装を美麗にレストアすることも可能です。また使い方がわからないというようなご相談については、弊社会員の方には撮影の方法などもお教えいたしております。
今から80年以上も前のカメラで、このような美しい写真を撮影できるのはとても楽しいです。早田カメラ店には各種の木製カメラが在庫いたしておりますので、ぜひお問い合わせください。そして修理はどうぞ弊社に遠慮なくご相談ください。