今月の一枚

2013年6月 レチナⅡc レチナ・クセノン50mmF2.8

2013年6月 レチナⅡc レチナ・クセノン50mmF2.8

このモデルはEV方式を採用しており、シャッター速度ダイアルを動かすと同時に絞りも動いてしまう。シャッターをセットしてから、絞りを変更するようにする。

このモデルはEV方式を採用しており、シャッター速度ダイアルを動かすと同時に絞りも動いてしまう。シャッターをセットしてから、絞りを変更するようにする。

折り畳んだところ。前の機種のレチナⅡまでの角張ったデザインとは一変して、丸みを帯びた柔らかい姿となった。

折り畳んだところ。前の機種のレチナⅡまでの角張ったデザインとは一変して、丸みを帯びた柔らかい姿となった。

巻き上げレバーは底部にある。右の三脚穴周囲のカバーを動かすと、その下から裏蓋をあけるボタンが現れる。

巻き上げレバーは底部にある。右の三脚穴周囲のカバーを動かすと、その下から裏蓋をあけるボタンが現れる。

フィルム室。パトローネはレチナのためにコダックが開発したもの。

フィルム室。パトローネはレチナのためにコダックが開発したもの。

非常に鮮鋭な写りのレチナ・クセノン50mmF2.8レンズ。広角と望遠にレンズ交換可能。

非常に鮮鋭な写りのレチナ・クセノン50mmF2.8レンズ。広角と望遠にレンズ交換可能。

本革ケース。

本革ケース。

作例1 黄色いバス

作例1 黄色いバス

作例2 小岩花菖蒲園

作例2 小岩花菖蒲園

作例3 第六天榊神社

作例3 第六天榊神社

作例4 蔵前神社

作例4 蔵前神社

作例5 諏訪神社

作例5 諏訪神社

作例7 浅草神社(三社様)

作例7 浅草神社(三社様)

作例8 浅草寺五重塔

作例8 浅草寺五重塔

解説

レチナについては、2009年6月にエクター47mmF2レンズがついたレチナⅡ型をご紹介いたしました。レチナの歴史についてはそちらにまとめてありますので、ついでにご覧ください。
今回ご紹介するレチナⅡcは、私が十数年愛用しているカメラです。入手した時から外観は使い込まれていたのですが、レンズの状態が素晴らしく、各部の動作も快調で、特にメンテナンスもせずに今に至ります。さすがにそろそろファインダーが曇って見づらくなってきましたので、手を入れる時期にきたと判断しています。

レチナⅡcは1954年に登場したカメラで、コダック社内のコードでは#020と呼ばれています。その前のモデル#016は一般にレチナⅡaと呼ばれ、直線を基本とした角形のデザインで、巻き上げレバーがボディ上部に備わったコンパクトなカメラなのですが、このレチナⅡcは大幅にデザインが変わり、曲線を多用したふっくらしたデザインに変わりました。また巻き上げレバーはボディ下部に移りました。実は同時に露出計が内蔵された、より上位のレチナⅢcが登場したため、レチナⅡcは廉価版という位置づけとなり、レンズもⅢcがクセノン/ヘリゴンの50mmF2に対して、Ⅱcはクセノン/ヘリゴンの50mmF2.8となっています。レンズ構成上は後群は同じで、前群だけが異なっているようで、両機種とも前群レンズを交換することで広角35mmと望遠80mmにすることがてきます。

レチナⅡc/Ⅲcは、1958年にファインダーが大型化されたⅡC/ⅢCに交代します。機種名も小文字のcに対して大文字のCが刻印されており、俗に前者を小窓、後者を大窓と呼んで区別します。レンズは同じですから、撮影できる写真は同じです。

フィルム全盛の時代には、レチナ・シリーズは非常に人気が高く、中古カメラフェアなどでとてもよく売れたカメラでした。また弊社の修理実績でも最上位に並んでいます。しかしここ数年、35mm判コンパクトカメラの売れ行きは全般に低調で、レチナも残念ながらその例外ではありませんでした。ようやく最近またレチナの修理依頼が増えてきていて、また状態の良いものを買い求めるお客様が早田カメラ店を訪れるようになってきました。

作例をご覧いただければすぐわかるように、レチナは大変良く写る素晴らしいカメラです。折り畳めば携帯性も極めてよく、常用35mm判コンパクトカメラとして特にお勧めできる名機です。50mmという焦点距離にこだわって写真を撮られる方には、最良の伴侶の一つとなることでしょう。

なおレチナシリーズについては、修理実績をご覧いただければお分かりいただけるように、多数の機種を修理いたしております。どうぞ遠慮なくご相談ください。

★撮影フィルムはすべてコダック PROPHOTO XL100