レチナについては、2009年6月にエクター47mmF2レンズがついたレチナⅡ型をご紹介いたしました。レチナの歴史についてはそちらにまとめてありますので、ついでにご覧ください。
今回ご紹介するレチナⅡcは、私が十数年愛用しているカメラです。入手した時から外観は使い込まれていたのですが、レンズの状態が素晴らしく、各部の動作も快調で、特にメンテナンスもせずに今に至ります。さすがにそろそろファインダーが曇って見づらくなってきましたので、手を入れる時期にきたと判断しています。
レチナⅡcは1954年に登場したカメラで、コダック社内のコードでは#020と呼ばれています。その前のモデル#016は一般にレチナⅡaと呼ばれ、直線を基本とした角形のデザインで、巻き上げレバーがボディ上部に備わったコンパクトなカメラなのですが、このレチナⅡcは大幅にデザインが変わり、曲線を多用したふっくらしたデザインに変わりました。また巻き上げレバーはボディ下部に移りました。実は同時に露出計が内蔵された、より上位のレチナⅢcが登場したため、レチナⅡcは廉価版という位置づけとなり、レンズもⅢcがクセノン/ヘリゴンの50mmF2に対して、Ⅱcはクセノン/ヘリゴンの50mmF2.8となっています。レンズ構成上は後群は同じで、前群だけが異なっているようで、両機種とも前群レンズを交換することで広角35mmと望遠80mmにすることがてきます。
レチナⅡc/Ⅲcは、1958年にファインダーが大型化されたⅡC/ⅢCに交代します。機種名も小文字のcに対して大文字のCが刻印されており、俗に前者を小窓、後者を大窓と呼んで区別します。レンズは同じですから、撮影できる写真は同じです。
フィルム全盛の時代には、レチナ・シリーズは非常に人気が高く、中古カメラフェアなどでとてもよく売れたカメラでした。また弊社の修理実績でも最上位に並んでいます。しかしここ数年、35mm判コンパクトカメラの売れ行きは全般に低調で、レチナも残念ながらその例外ではありませんでした。ようやく最近またレチナの修理依頼が増えてきていて、また状態の良いものを買い求めるお客様が早田カメラ店を訪れるようになってきました。
作例をご覧いただければすぐわかるように、レチナは大変良く写る素晴らしいカメラです。折り畳めば携帯性も極めてよく、常用35mm判コンパクトカメラとして特にお勧めできる名機です。50mmという焦点距離にこだわって写真を撮られる方には、最良の伴侶の一つとなることでしょう。
なおレチナシリーズについては、修理実績をご覧いただければお分かりいただけるように、多数の機種を修理いたしております。どうぞ遠慮なくご相談ください。