今月の一枚

2014年9月 ロールOP(Ⅱ) アンチコマー75mmF2.8

201409_camera1L

このカメラは6x4.5cm判で、底部のカウンター付きの巻き止め機構を利用して巻き上げることも、2つの赤窓にフィルム裏紙の数字を順に出しながらフィルム送りを行うこともできる。

6×4.5cm判で、底部のカウンター付きの巻止め機構で巻上げるが、2つの赤窓にフィルムの数字を順に出しながらフィルム送りを行うこともできる。

たすきは単純な構造。

たすきは単純な構造。

折り畳んだところ。ボディの基本構造はバルダックスと同じ。

折り畳んだところ。ボディの基本構造はバルダックスと同じ。

レンズはプラウベル社の誇るアンチコマー75mmF2.8。

レンズはプラウベル社の誇るアンチコマー75mmF2.8。

弊社で分解整備中の様子。

弊社で分解整備中の様子。

作例1 べんがら 1/200 F11

作例1 べんがら 1/200 F11

作例2 いつものビル 1/200 F11

作例2 いつものビル 1/200 F11

作例3 早田カメラ店 1/200 F11

作例3 早田カメラ店 1/200 F11

作例4 かりぶ 1/200 F11

作例4 かりぶ 1/200 F11

ドイツを代表する名機のひとつ、マキナシリーズを長年にわたり製造したプラウベル(Plaubel)社は、1902年にヒューゴ・シュラーダー(Hugo Shrader)という人物がフランクフルトに設立しました。当初はレンズを製造していましたが、1912年頃蛇腹折り畳み式の小型カメラ、マキナ(Makina)を発売、カメラメーカーの仲間入りを果たします。このカメラは6×4.5cm判を撮影するものでしたが、その後の6x9cm判(シートフィルムでは6.5x9cm判)を撮影する、より大型のマキナシリーズに受け継がれる特徴を持っていました。ボディの前板部がストラット式のたすきにより、そのまま前に出て撮影体勢となるのです。このため折り畳めばごく薄型となる巧みな構造を持っていました。大型のマキナ(Ⅰ型とも呼ばれる)が1920年頃に登場したので、小型の初代モデルはベビーマキナと通称されています。ステレオ写真を撮影するため、レンズを2個備えたステレオ・マキナというモデルもありました。そして1933年のマキナⅡ型から連動距離計を内蔵して高機能化し、特に報道関係で世界的に多用されました。その後もレンズの全群交換式化やシャッターの高性能化などの改良が続けられ、戦後最終型のマキナⅢR型は1960年頃まで販売が続けられていました。

マキナのほかにも特徴あるカメラがいくつもあり、最大9x9cm判までの写真が撮影できる全金属製の中判用大型一眼レフのマキフレックス(Makiflex,1961)、6x9cm判~10x15cm判までの大判写真を撮影するモノレールタイプの大判カメラであるペコ(Peco)シリーズ、広角専用カメラとして未だに根強い人気を持つベリワイド(Veriwide)100などが有名です。プラウベル社は1975年に日本のドイ・インターナショナルに買収され、その元で登場した6x7cm判新型蛇腹折りたたみ式カメラがマキナ67(1978)でした。その後広角専用機マキナW67(1981)、改良型マキナ670と続き、現在でも人気のあるカメラとなっています。

さて、1933年頃ブローニー判(120判)フィルムを使用する6x9cmあるいは6×4.5cmのスプリングカメラとして、フィックス・フォーカス(Fix Focus)という名前のカメラが登場しましたが、すぐに名前がロール・オーピーに変わりました。このカメラはドイツのバルダ社の有名なバルダックスと同じものです。つまりバルダ社からのOEMということになりますが、撮影レンズはプラウベルの誇るアンチコマー(Anticomar)レンズが採用されています。アンチコマーとは、その名の通りレンズの収差の一つであるコマ収差を極限まで減らしたという意味で、3群4枚のテッサータイプのレンズでF2.8の明るさを誇る当時の高性能レンズでした。

今回ご紹介ロール・オーピーⅡ型は1935年頃に登場した高級型で、マキナシリーズと同じ型の連動距離計が内蔵されました。ファインダーも光学式となっています。シャッターはこの時代の高級機の定番コンパー・ラピッドが装備され、レンズは自社製のアンチコマー75mmF2.8です。作例をご覧いただければわかるように、大変良く写るカメラで、マキナ同様今も実用性の高いカメラです。

弊社ではプラウベル社のカメラは、すべて整備可能です。遠慮なくご相談ください。