エルンスト・ライツ(Ernst Leitz)社の28mm広角レンズの歴史は、第二次世界大戦前の1935年に登場したヘクトール(Hektor)28mmF6.3からスタートします。ヘクトール28mmは 戦後まで長く生産され、最後期はレンズにコーティングが処置されています。現在では暗いレンズですが、写りの良さととてもコンパクトな姿で今でも愛用され ている方が少なくありません。およそ9,700本製造されたそうです。
次に登場したのが、ズマロン(Summaron)28mmF5.6レンズで1955年に発売されました。このレンズは開放から素晴らしいシャープな描写をするレンズです。被 写界深度目盛りが赤文字のため日本では赤ズマロンと呼ばれています。しかしこの時代に国産ではニッコール28mmF3.5やキヤノン28mmF3.5など 一絞り以上明るいレンズが登場しており、F5.6ではさすがのライツでも商売上厳しいかったのではないかと思われます。実際赤ズマロンの生産本数は少なく およそ6,200本だそうです。
Mマウント用として大幅に性能を向上させて開放F値F2.8として登場したのが、エルマリート(Elmarit)28mmF2.8(初代)で1965年のことです。6群9 枚対称型レンズ構成のため、レンズ後端がカメラマウント内部に深く入り込んでいるのが特徴です。その滑らかな独特の描写が今でも大変人気で、現在も中古市 場ではかなり高価です。
ところがライカM5が登場すると、TTL測光の受光部がレンズ後端に当たってしまうと言う問題が発生しました。このためレンズ構成を変更し、レンズ後端 の突出を少なくした6群8枚構成の新型レンズが1972年に発売されます。これが今回ご紹介するレンズになります。このレンズもよく写るレンズで人気があ りますが、生産本数も比較的多いため現在も比較的入手しやすい点が魅力です。初期型は指あてが初代と同じで、無限遠ストッパーになっていますが、後期型は ストッパーがなくなり突起状になっています。
弊社では1980年頃までのライカのレンズのほとんどを修理できます。愛用されているレンズになにか気になることがございましたら、早めにご相談ください。
★撮影に使用したフィルムはすべてフジ業務用フィルム(ISO100)