武蔵野光機が昭和43年(1968年)3月に発売した、リトレック・シックスはユニークな6x6cm判全金属製一眼レフカメラです。日本カメラ博物館が選定する「歴史的カメラ」に選ばれている、我が国を代表するカメラの一つでした。その形状は一般的な35mm判一眼レフカメラをそのまま大きくしたもので、ハッセルブラッドなどに代表されるスクウェア型の6x6cm判一眼レフカメラとは異なるものです。世界的に見ると戦前のドイツのレフレックス・コレレや、前後の東ドイツのプラクチシックス(後のペンタコンシックス)の流れに追随するものと言えます
リトレック・シックスのシャッターはフォーカルプレーンシャッタ-式で、レンズ交換が可能です。シャッター速度はバルブと、1~1/500秒まで等間隔で設定可能です。またペンタブリズムは取り外すことができ、ウェストレベル式でも使用できます。ピントスクリーンにはマイクロプリズムが備わっています。反射ミラーはクイックリターン式、レンズの絞り制御も自動絞り込み方式が採用されています。
撮影フィルムは120判フィルムと220判フィルムの使用が可能で、圧板の位置を切り替えるようになっています。フィルム巻き上げは2回巻き上げで、2回目はわずかな巻き上げ量です。リトレック・シックスは35mm判一眼レフカメラと同じ形状、操作性を有するため取り扱いは容易で、今回の撮影でもとても使いやすいカメラでした。
また標準装備されたリットロン80mmF2は当時6x6cm判一眼レフカメラ用レンズとしては、世界一の明るさを誇りました。このレンズはノリタ光学が設計・製造したものです。今回実写してみて、大変優れた描写のレンズであることがよくわかりました。
リトレック・シックスの発売当時の価格は80mmF2標準レンズ付きで78,500円でした。米国に輸出も行われ、グラフィック(Graphic)6×6、ワーナー(Warner)6×6などの別名で販売されていました。リトレック・シックスは非常に意欲的なカメラでしたが、そのうちレンズメーカーとのトラブルで販売製造の継続が困難となってしまったそうで、レンズを供給していたノリタ光学に製造販売が引き継がれ、部分的にスペックや外観形状を変更して新たにノリタ66として発売されました。ノリタ66は交換レンズも充実していました。
武蔵野光機は1972年にウィスタ(Wista)と名を変えて、大判カメラメーカーとして活躍しました。現在も株式会社ウィスタはウィスタ・フィールド45などの大判カメラの製造・販売を行っています。
弊社ではリトレック・シックスの分解整備も可能ですが、整備費用は比較的高価です。