今月の一枚

2019年8月 パノンカメラ AⅡ ズマール50mmF2付き

2019年8月パノンカメラ AⅡ 水準器が見やすく配置されている

2019年8月パノンカメラ AⅡ

構図はフレームファインダーで決める

2019年8月パノンカメラ AⅡ

シャッターをチャージしたところ

2019年8月パノンカメラ AⅡ

フィルム送りは赤窓式

2019年8月パノンカメラ AⅡ

シャッター速度は1/2、1/50、1/500の3段階

2019年8月パノンカメラ AⅡ

底蓋は2つのロックネジで固定されている

2019年8月パノンカメラ AⅡ

フィルムを装填する中枠を取り出したところ

2019年8月パノンカメラ AⅡ

1/50 F22.5

2019年8月パノンカメラ AⅡ

1/50 F22.5

2019年8月パノンカメラ AⅡ

1/50 F13

 

今回は修理が完了したばかりのパノンカメラAⅡをご紹介いたします。パノンカメラAⅡはブローニー判(120判)フィルムを使用する首振り型のパノラマカメラです。パノンカメラAⅡを製造したパノンカメラ商工は、1952年に設立された日本のメーカーです。最初から最後までパノラマカメラ専業で、世界的に見ても非常に珍しい存在感のあるカメラメーカーでした。パノンカメラ商工初の製品はブローニー判(120判)フィルムを使用するパノンカメラ50Aで1952年に製造を開始したそうです。今回ご紹介するパノンカメラⅡAは一般に市販された最初のカメラになるようです。最終型のワイドラックス1500は2017年1月の今月の一枚でご紹介いたしております。メーカーの歴史についてはそちらをご覧ください。

パノンカメラAⅡは水平方向140度の画角でパノラマ写真を撮影できます。その姿はとてもユニークな印象を受けますが、半回転近く動作する首振り機構を合理的に納めてあります。首振り機構はゼンマイバネで動作し、チャージはレバー式で撮影前に毎回行います。シャッター速度は1/2、1/50、1/500の3段階で、バネの強さとスリットの幅でコントロールし、さらに細かな露出調整は絞りの調整で行うようになっています。

フィルムは取り外し式の中枠に装填します。フィルム巻き上げはノブ式で、フィルム送りは赤窓式です。裏紙の数字で1、3、5、7、9、11を出して撮影し、120判フィルムに6コマ撮影できます。光学ファインダーはなく、ボディ上にあるフレームファインダーで撮影範囲の見当をつけて撮影することになります。パノラマ写真では水平を出すことが重要ですので、ボディ上部には大型の水準器が縦横2方向に十字に配置されています。

搭載されているレンズは、このカメラはなんとエルンスト・ライツ社のライカ用大口径標準レンズ、ズマール50mmF2です。パノンはまだ自社でレンズを用意することができませんでしたので、参考資料によれば当時小西六写真工業のヘキサー50mmF3.5やヘキサノン50mmF2.8を調達して装着していたそうですが、より大口径のズマール付きも製造していたことが確認できました。レンズのピント調整も絞り調整もスリットを通してできるようになっていますが、ズマールではイメージサークルがブローニーフィルムの幅をカバーしませんから、このカメラで撮影できるフォーマットは42mmx120mmという変則的なものになっています。画角は140度ですが、細長い画面なのでワイドラックス1500の撮影画像よりもパノラマ感が強いです。パノラマ撮影はパンフォーカスで撮ることが必要ですから、絞りをかなり絞り込むため撮影結果は作例写真の通りとてもシャープです。大きなボディですが、なれれば想像するよりもはるかに使いやすく、撮影しやすいカメラです。

弊社ではこのパノンやパノフィック、ワイドラックス各型の整備が可能です。どうぞお気軽にご相談ください。

★作例写真 フィルムはフジNS160