2019年12月の「今月の一枚」で我が国最初の本格的35mm判レンジファインダー内蔵フォーカルプレーンシャッター式カメラ、ハンザキヤノンをご紹介いたしましたが、今回ご紹介するキヤノン7はキヤノンのレンズ交換式レンジファインダーカメラの最終型です。
キヤノン7は1961年(昭和36年)9月に発売されました。それまでのキヤノンⅥシリーズの後継機として企画された高級レンジファインダーカメラですが、先行して1959年3月に発売された廉価型のキヤノンP型同様にそれまでの多大なコストがかかる変倍式ファインダーを止めて大幅に簡素化し、異なる焦点距離のフレームが同じ視野に現れる方式に変更されました。具体的にはファインダー倍率は0.8倍固定で、35mm、50mm、85mm/100mm、135mmの4つのフレームをボディ上部のダイヤルにより手動で切り替えるようになりました。採光式ブライトフレームですので、ファインダーの見えはとても鮮明です。フレームのパララックスは自動補正になっています。有効基線長は47.2mmです。
ファインダーを簡素化した代わりに、キヤノンとしてボディに初めてセレン光電池式露出計を内蔵して、撮影の利便性を大幅に向上しています。内蔵セレン光電池式露出計は、シャッター速度と連動して適正な絞り値を表示しますので、それを読み取ってレンズの絞り値をセットして撮影します。メーターの感度は高低2段切り替えとなっています。これにより撮影時の露出の決定はとても容易になりました。
フィルム巻き上げは前のキヤノンVI型には底部トリガー式のVITとレバー式のVILがありましたが、キヤノン7はレバー式のみとなりました。シャッター幕はⅤTDM型で初めて採用されたスチール幕が踏襲されています。
キヤノン7の名前には、それまでのローマ数字ではなく初めてアラビア数字を使っています。このカメラには当時世界一の明るさを誇ったドリームレンズ、キヤノン50mmF0.95レンズが装着できました。ライカ互換のスクリューマウントではなく、マウント部外周に設けられた独自の外バヨネット爪を使用して取り付けます。
このカメラはキヤノンのお家芸とも言える徹底的な合理化により、キヤノン50mmF1.4レンズ付きで47,500円というという驚くような低価格を実現、このため市場には大好評で迎えられました。総生産台数は125,000台とキヤノンレンジファインダーカメラの中でも、そして日本の国産レンジファインダーカメラの中でも群を抜いた数でした。なおドリームレンズのキヤノン50mmF0.95付きでは86,000円でした。
この後1965年(昭和40年)4月にキヤノン7の露出計をCdSメーターに小改良したキヤノン7Sが登場します。この頃になると高級レンジファインダーカメラは全世界的に衰退し、意欲的な新型カメラを開発していたのはライカとキヤノンくらいしかありませんでした。そしてキヤノンもこの7Sが栄光あるキヤノンレンジファインダーカメラシリーズの最後を飾ることとなったのです。
弊社ではキヤノン7およびキヤノン7Sカメラの修理をお受けしています。今回作例写真を撮影したカメラも、レンズともどもオーバーホールしたばかりで、大変気持ちよく撮影することができました。