Century 35 with Prominar 48mmF2.8
コンパクトで美しいデザイン
風邪薬として長年にわたりおなじみのコルゲンコーワなど、薬品メーカーとして一般によく知られている興和株式会社は、1894年に綿布問屋として創業し百二十余年の歴史があります。光学製品分野に進出したのは第二次世界大戦後のことで、カメラは1954年に二眼レフカメラのカロフレックスオートマットを発売したのが最初です。そして1978年に6x6cm判一眼レフのコーワスーパー66で、カメラ製造から撤退してしまいました。しかしその後もバードウォッチング用のフィルードスコープなどで「プロミナー」ブランドは独自の存在感を発揮、現在は双眼鏡などの光学製品が充実し、マイクロフォーサーズカメラ用のプロミナー交換レンズを発売するなど、興和の光学部門である興和光学株式会社の活動は活発になっている印象です。
さて今回ご紹介するセンチュリー35は、アメリカのグラフレックス社(Graflex Inc.)にOEM製品として供給したモデルです。興和はアメリカに現地法人を1955年に設立、これは日本光学工業についで2番目に早いそうです。初代のセンチュリー35は1957年にアメリカでの発売が開始されました。カメラのボディは、当時の興和の主力機であった広角専用機カロワイドがベースになっていて、これに標準レンズのプロミナー45mmF3.5を装着していました。カメラの基本的スペックはカロワイドと同等で、連動距離計式の35mm判レンズシャッターカメラでした。この頃グラフレックス社は、特に報道用カメラとして有名な4×5インチ判のスピートグラフィック、ステレオカメラのステレオグラフィック、そして35mm判カメラのグラフィック35を製造販売していたのですが、当時売れ筋になっていた35mm判カメラのラインアップをコーワの力を借りて増強したわけです。
続いて上位機のセンチュリー35(F2.8)モデルが登場します。同じ1957年ですが、レンズが3群4枚テッサータイプのプロミナー48mmF2.8になりました。これが今回ご紹介するカメラになります。当時45mmF3.5は49.5USD、48mmF2.8は64.5USDで販売されていました。F2.8モデルもシャッターや距離計などのスペックはF3.5モデルと同じですが、ファインダーに近距離補正指標付きブライトフレームが入りました。シャッターはセイコーシャMX、1~1/500秒とバルブです。今回撮影に使ってみて、とても気軽に使える使いやすいカメラで好印象でした。作例をご覧いただくとよくわかるように、プロミナーレンズはとてもシャープで、絞り開放から綺麗な像を結びます。連動距離計でピント合わせしますから、ピンぼけ写真をつくる心配も無く、確実に写真を撮影できる良いカメラです。このカメラは1958年にカロ35Eという名称で国内発売されました。
その後1959年にはプロミナー50mmF2を搭載しカメラのデザインも一新された高級型のセンチュリー35Nと露出計を内蔵したセンチュリー35NE、距離計を省き簡素な構造で入門機としたセンチュリー35Aが登場しました。センチュリーシリーズはこれで終了しました。
なお弊社ではコーワやグラフレックスのカメラ全般の修理をお受けいたしております。
★作例写真 フィルムはフジ業務用フィルム(ISO100)