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作例1 絞りF8 1/250 コニカミノルタ センチュリア100 | ||
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解説
フォクトレンダー社は戦前2眼レフを2種類製造しています。普及クラスの小型軽量なモデルがブリリアント(Brilliant 1932~,ドイツ語表記ではブリラントBrillant)、高級クラスが高機能なスパーブ(Superb 1933~,ドイツ語読みではズパーブ)です。
スパーブは高級版というだけではなく、その凝りに凝ったというか、他メーカー特に二眼レフの王者ローライフレックスとはまったく異なる構造と操作性を 持っている点、非常におもしろいカメラです。またそのたたずまいはクラシカルな雰囲気が強く、眺めていても楽しいカメラです。そしてその写りですが、フォ クトレンダー社の誇る高性能鏡玉ヘリア75mmF3.5付きとスコパー75mmF3.5付きの描写性能はいずれも素晴らしいものです。クラシックカメラの コレクターなら、必ず欲しくなってしまうカメラなのです。
そのユニークな構造を見ていきましょう。まずほとんどの二眼レフはフィルム送りが上下方向ですが、スパーブは左右両側にフィルム室を備え横方向 にフィルムが走ります。そしてフィルム巻き上げはレバー式。コマ数計も備えていて、赤窓で1を出してからコマ数計を1にリセットすれば、あとはコマ数計だ けを見てフィルムを進めることができるようになっています。
シャッターは当時最高級のコンパーですが、シャッターリングの文字の刻みが裏返しになっています。これはシャッターの前につけられた反射プリズムを通して 上方から見たときに、正しい数字に見えるようにするためです。こんな機構を持ってい二眼レフは世界でこのカメラだけです。
ピント合わせと構図の決定は、一般的な二眼レフと同じく、上のピントフードを開けると中のスクリーンにビューレンズを透過した光が像を結ぶのを見て行いま すが、スクリーンには超小型の水準器が内蔵されていてカメラの水平を出しやすくしてあります。なによりおもしろいののは、ピントを繰り出していくとビュー レンズが徐々に下向きにお辞儀するようになっており、それで近接撮影時のパララックスを補正するのです。これも他に例をみないスパーブだけの機構です。ピ ント合わせは下側のシャッターユニットの外側にあるヘリコイドをレバーで回すのですが、ビューレンズとはギアで連動しています。
写真のスパーブは最初期型で、左右の吊り環が耳型をしています。なおどこかでシンクロ改造されていていますが、オリジナルにはこれはありませ ん。
撮影レンズはヘリアとスコパーですが、ヘリアの方が高級レンズということもあり、現在もスコパーよりは高価です。私は両方手元にありますが、写りについて は甲乙つけがたいと思っています。なおもちろんこのスパーブも、弊社で完全な整備が可能です。