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今月の一枚  2007年2月
ゼンザブロニカ・デラックス ニッコールP・C 75mmF2.8
Zenza Bronica Deluxe Nikkor P・C 75mmF2.8

ゼンザブロニカ・デラックス ニッコールP・C 75mmF2.8   ゼンザブロニカ・デラックス ニッコールP・C 75mmF2.8
  作例1 浅草寺境内にて  絞りF8 1/250秒 フジプロ160S
   
ゼンザブロニカ・デラックス ニッコールP・C 75mmF2.8ピントフードを起立したところ。 ゼンザブロニカ・デラックス ニッコールP・C 75mmF2.8作例2 マイクロモンチッチ 
絞りF5.6 1/60秒 フジプロ160S
ゼンザブロニカ・デラックス ニッコールP・C 75mmF2.8巻き上げノブとピントノブは同一軸で、内側にシャッター速度ダイアルがある。    
ゼンザブロニカ・デラックス ニッコールP・C 75mmF2.8レンズマウント。    
ゼンザブロニカ・デラックス ニッコールP・C 75mmF2.8傷んだ遮光幕の交換。    
ゼンザブロニカ・デラックス ニッコールP・C 75mmF2.8ボディ右側面内部。    
ゼンザブロニカ・デラックス ニッコールP・C 75mmF2.8ボディ左側面内部。    

解説

 ゼンザブロニカといえば、国産6x6cm判一眼レフのトップブランドとしてその名をしらないカメラ好きはいないでしょう。ゼンザブロニカは世界の 6x6cm判一眼レフのトップブランドであるハッセルブラッドを越えることを目標に、立志伝中の起業家であった故吉野善三郎氏が生涯をかけて世に送りだし た、日本が世界に誇るシステム一眼レフでした。私が生まれた年と同じ1959年(昭和34年)に登場したブロニカシリーズは、その後20年間プロの世界で 大活躍しましたが、1980年にハッセルブラッドと同じレンズシャッター式システム一眼レフのSQシリーズに交代したのでした。

 初代ブロニカ・デラックスから始まるフォーカルプレーンシャッター式のブロニカは、実に「使える」カメラでした。たとえば大判用のレンズなどを 加工してボディに取り付ければ、撮影可能という点で自作派には得難いカメラでした。その上クイックリターン式ミラーの実現や、巻き上げしてあってもしてな くても自由に交換できるマガジン式フィルムバックなど、ハッセルブラッドではいまだに実現されない夢の機能が最初のゼンザブロニカ・デラックス型から備 わっていたのです。ゼンザブロニカはユニークなアイデアに富んだ独創的なカメラであり、外見こそハッセルブラッドによく似たマクワウリ型でしたが、その内 部機構はハッセルブラッドをはるかに越えた素晴らしいカメラだったのです。そして特にゼンザブロニカ・デラックスは、外観の美しさでも群を抜いていて、洗 練されたデザインの銘板やオリーブグリーンの外装など、程度の良いデラックスは飾って眺めるだけでも満足できる美しいカメラです。

 しかしゼンザブロニカの魅力は、なんといっても中判一眼レフカメラで唯一ニッコールレンズが使えるカメラであったことを挙げなければならないで しょう。超広角40mmから超望遠1200mmまでカバーするニッコールレンズ群は、その極めて優れた描写性能で今でも十二分に実用になります。特にレン ズはシャープさが命と考えるハード撮影派の方には、いまだ最高の選択の一つでしょう。それらのニッコールレンズ群は、ブロニカボディともどもニコンマニア なら手元に揃えるべき必須アイテムではないでしょうか。

 さて、今回作例にした使用した標準の75mmf2.8は、すばらしいシャープさを持った傑作レンズです。良くできたクセノタールタイプ(4群5 枚構成)のレンズは、一般にきわめて高解像力を示すという見本のようなレンズです。当時のカメラ雑誌の数量的な評価も大変よく、通常の撮影では開放から本 当に良く写りますが、中心部に比べて周辺部が劣ると評価されることもあるようです。これは中心が良すぎるためと考えたほうがいいでしょう。この 75mmf2.8レンズは最後はマルチコート化されたP・Cとなります(今回撮影に使用したレンズです)。しかしこの名レンズは、新設計のDX型の登場後 姿を消したのでした。

 このゼンザブロニカ・デラックスの整備は、弊社では高額な修理費用が必要な機種で、レンズ、ボディ、マガジン一式で\168,000(税込み) です。シャッター幕に加えてファインダーの遮光幕の交換が必要で、複雑なシャッター調速部や巻き上げ機構部のオーバーホールに加えて、マガジンの漏光も一 般的トラブルであるため遮光材をすべて交換する必要があります。しかし状態の良いゼンザブロニカ・デラックスは、中古相場で20万円を軽く越えますので、 やはり完全な状態にしておく必要があるべきカメラであると言えるでしょう。

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