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作例1 浅草吾妻橋交差点 1/200 F8 DNP100 | ||
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解説
先月号ではハッセルブラッド1000Fのエクター80mmF2.8レンズをご紹介し、6月にはレチナ2型のエクター47mmF2レンズを取り上げ ました。また古いところでは2004年4月にコダック・エクトラのエクター50mmF1.9レンズをご紹介しています。今月号はまたもやエクター 47mmF2レンズを取り上げることにしました。カメラはアメリカのライカコピー機として非常に有名な、カードン(Kardon)の通信部隊用モデル (Signal Corps Model)、俗に軍用モデルと呼ばれているものです。
カードンは第二次世界大戦後まもない1945~47年頃にアメリカのプリミアー・インストルメンツ(premier instrument)社が製造しました。軍用モデルがあることから推測できるように、アメリカ政府からの製造要請があったそうです。第二次世界大戦によ りドイツはアメリカの敵国となり、ライカの直接的な供給を受けられなくなったことで、当時もっとも機動性が高く性能に優れた小型カメラであったライカは、 世界各国でその確保が戦略上の重要課題となり、アメリカやイギリスなど自国でのカメラ製造が可能な国はライカコピー機の製造に着手したのでした。ドイツの 同盟国であった日本でさえ、帝国陸海軍の要請でライカのほぼ完全なコピー機と言われているニッポン(Nippon)カメラ(後のニッカシリーズのルーツ) を製造していることはよく知られています。
カードンを設計・製造したのは、プリミアー・インストルメンツ社のピーター・カードン(Peter Kardon)でした。カードンの最初の生産品は1945年に登場したのですが、カードンにとって不運なことにその頃にはすでにドイツとの戦争が 終結しており、アメリカ政府はカードンの発注を取り消したのだそうです。そのためカードンは少数の生産にとどまり、現在では希少なカメラとしてプレミアが ついており、比較的高価なカメラとなっています。
さて、カードンの原型となったのは、ライカⅢaでした。カードンは外観の基本形や操作部の配置、各部部品の形状など多くの箇所が、ライカⅢaを忠実にまね ています。しかし例えば距離計の視度調整機構は接眼部ではなく、ライカⅢb以降のカメラに準じた巻き戻しノブの基部にあるなど、多少の違いもあります。で すがカードンはバルナックライカを使い慣れている人には、違和感なく操作できるカメラであることは間違いありません。
カードンには軍用モデルと一般に販売されたモデルが存在し、後者はシビリアンモデル(Civilian Model)と呼ばれていて、カメラとレンズの外観形状が違います。軍用モデルはシビリアンモデルに比べて巻き上げノブが巨大化しており、シャッターボタ ンの背が高くなってボディ上部に突出しています。これらの変更は、手袋をはめたままでも操作が容易であることを目的と言われています。さらに軍用モデルは 背面に通信部隊名、軍の管理番号などが記されたプレートが装着されています。
もう一つ、装着レンズのエクター47mmF2レンズのヘリコイドを操作するギアの位置が、軍用モデルとシビリアンモデルでは大き く異なって、軍用モデルは正面左下7~8時の位置であるのに対して、シビリアンモデルは左上10~11時の位置にあることにも注意が必要です。
話が前後してしまいましたが、カードンを魅力的にしているのはこのエクター47mmF2レンズが装着されているということが大き いように思います。レンズ自体は先に紹介したレチナⅡ型のエクター47mmF2と基本的に同じものということで、ガウスタイプ4群6枚構成の大口径レンズ です。大変ユニークなのは、ピント合わせは鏡胴から突出したギアを回転させて行うことでしょう。なおピント合わせは必ずこのギアを操作して、鏡胴部のヘリ コイドを回転させなければなりません。鏡胴部を直接もってヘリコイドを回転させると不調あるいは故障の原因となります。整備されたレンズは、ギアを操作す れば軽くヘリコイドが回転します。
このギア部の位置は先に書いたとおり軍用モデルとシビリアンモデルで位置が異なっていますから(レンズマウントはいずれもライカ L39なので、ボディを交換して使用することが可能)、シビリアンモデル用のレンズは右手の人差し指あるいは中指で、軍用モデル用レンズは左手の人差し指 手で操作することになるでしょう。
さてカードンの整備ですが、ボディのオーバーホールは距離計付きのバルナックカメラと同料金で、基本料金44,100円(税込 み、以下同)、幕交換は18,900円です。エクターレンズのオーバーホールは37,800円です。